猫でも寂しがりることはある@日帰り旅行に出かける家族を追いかけてきた
以前に三毛猫を飼っていました。三毛猫ですから当然のように女の子で(遺伝子の性質上、三毛猫のオスは生まれません)、猫なのにトラという名前。
女王様気質とでもいいましょうか、非常に貴位の高い猫で、いつもツンケンした顔をしていました。
家族の中でも、ご飯をくれる母親のことはちょっとは大事にしますけれど、父には冷たく、子供などは相手にしませんよという雰囲気で触らせてもくれません。相手にしてくれるのは、好物のマグロのお刺身を差し出した時だけです。
ところが一度だけ、女王トラが意外な一面を見せたことがあります。
当時の我が家は自営業だったため、私たちは家族そろって出かけるということがまずありませんでした。それが一度だけ、たった一日だけ休みがとれて、家族みんなで温泉に出かけたのです。
私達家族を追いかけてくる飼い猫
といっても日帰りでしたし、遠くへ行くわけでもなかったのでトラは家に置いて行きました。
その日の朝、家族全員が車に乗り込むのを、トラはじーっと見つめていました。今までにないことが起きているのだと思っていたのかしれません。
でも、私たちは初めての家族旅行に浮かれていて、トラに言葉をかけるのも忘れていました。そして車が発進すると…、トラは追いかけてきたのです。
まるで犬のように走って車を追いかけて、ニャオーニャオー! と鳴くトラ。聞いたこともないほど大きな声で、それは悲しそうでした。私たちは不安に思いましたが車はあっという間にトラを引き離してします。
「大丈夫だよ、トラは賢い猫だから」と父は言いました。
しかし数時間後、帰宅すると、トラは、家にはいません。大慌てで家の周りを探しまわると、驚くほど離れたところでうずくまっているトラを発見しました。
私たちの車を追いかけて、ずーっと遠くまで走っていったものだから、自力では帰れなくなってしまったようです。トラは私たちの顔をみるとまるで犬のように駆け寄ってきました。そして一晩中、母のそばから離れなかったです。
猫だって寂しがることはあります
女王の威厳のカケラもない子猫のような様子でした。トラは20才まで生きましたが、あんなにも感情を表したことがなかったのと、あまりにも可愛かったのとで、忘れられない思い出です。
猫はツンデレな動物です。ツンツンした顔で、触らせてくれなかったり、人間のそばに寄ってこない子もいます。
それでも共に暮らしているかぎり私たちを家族と認めてくれているのです。隠れん坊が上手で、姿を見せてくれないことさえありますが、いつでもどこか人間の声の聞こえるところにいて安心するのです。
だから出掛けるときは、すぐ帰ってくるからね、などと話しかけてあげてください。言葉が通じなくても、心は通じて、安心するのではないかと思います。