耳をカットされている猫には意味がある@さくら猫をご存知ですか?
家の周りや公園で、耳がさくら型にカットされた野良猫を見たことがありませんか?実はこれ、誰かにいたずらされたわけでもなければファッションでもなく、ちゃんとした理由があるのです。
最近では以前と比べて野良猫が少なくなったとは言え、未だに年間約8万頭(2016年度)の猫が殺処分されています。そんな不幸な猫を少しでも減らすために行われているのが、『TNR』という活動なのです。そこで今回は、さくら猫『TNR』について詳しくご紹介いたします。
猫の妊娠と出産について
メス猫は1年間にどれだけの子猫を産むか知っていますか?猫は交尾をした刺激で排卵するため、1年中妊娠することが可能な動物です。とはいえ、2月~4月と6月~8月の温かい季節に発情期のピークを迎え、約2か月(60日~68日)の妊娠期間を経て出産となります。
一度の出産で平均5匹の子猫が生まれ、約2か月を親子で生活を共にしますが、子猫が離乳して独り立ちすると次の妊娠が可能になります。さらに別のオス猫の子どもを同時に妊娠することもあり、妊娠率・出産数が高い動物と言えるのです。
例えば、1回の出産で5匹の猫が生まれたとして、その半分の2~3匹がメス猫だったとします。すると半年後には10~15匹に増えて、1年後には50匹~70匹の猫が増える計算になるのです。
さくら猫『TNR』とは
さくら猫とは避妊手術を終えた印として、耳をV字にカットした野良猫のことです。
メス猫は避妊手術をしているかどうかは見た目では判断が難しいため、手術が終わっているかどうか見た目で分かるように、さくら型に耳をカットしています。そうすることで、何度も確保され手術されるのを防ぐ意味があるのです。
『公益財団法人どうぶつ基金』では1頭でも多くの野良猫を避妊手術することで、殺処分ゼロを実現するもっとも有効な手段だと考えています。
そのため全国の獣医や行政、ボランティアの方と協働して、毎年多くの猫に無料で不妊・去勢手術を施す「さくらねこ無料不妊手術事業(さくらねこTNR)」を行っているのです。
Trap(トラップ): 捕獲すること
Neuter(ニューター): 不妊手術のこと
Return(リターン): 猫を元の場所に戻す
耳をカットするのは痛くないの?
耳をカットされた猫を見ると、「痛そう」と思う人もいるかもしれません。しかし、カットされるのは避妊施術の全身麻酔中におこなうため、痛みは感じません。
また私の実家にいる猫は、避妊手術を受ける時にさくら猫にしてもらっています。もともと野良猫だった彼女は、保護した後も外に出ようとしたため、万が一家出をした時に2回手術を受けないようにとさくら猫の印を入れてもらったのです。もちろんカットされた耳は出血もなく、手術後も痛がる様子はありませんでした。
動物は人間よりも痛みに対しては鈍感とも言われています。猫にとって麻酔中に耳をカットされるよりも、何度も捕まえられて手術を受ける方がストレスになるのです。
不幸な猫を増やさないために私たちにできることは
今まで行政やボランティアの方の協力により、多くの野良猫が避妊手術を受けることができました。そのため、殺処分の数は少しずつですが減りつつあるのは嬉しいことです。しかし、まだ多くの猫が不幸にも処分されているのも現実です。
では少しでも不幸な猫を減らすために、私たちにできることは何があるのでしょうか?
以下では私達にもできる3つのことをご紹介します。
1.飼い猫の避妊・去勢手術をおこなっておく
まずは、飼い猫の避妊・去勢手術をきちんと済ませておくことも大切です。完全に室内飼いだから大丈夫、オス猫だからいいか…ではなく、万が一のことを考えてください。
何かの拍子に飼い猫が逃げ出してしまうかもしれません。「うちの猫は大丈夫」ではなく、「もしかしたら」と思って、きちんと避妊・去勢手術を検討してあげましょう。
【参考】メス猫の避妊手術が費用や手順がよくわかる@メリット・デメリットも解説
2.さくら猫『TNR』の活動を理解する
最近では雑誌や新聞、ネットでもさくら猫のことが取り上げられるようになりました。とはいえ、まだまだ『TNR』の意味や活動を知らない人も多くいます。
まずは、どんな活動をしているのかを正しく理解してください。それぞれの地域にいるボランティアの方が、不幸な猫を増やさないためにと日々頑張っているのです。
猫のために何かお手伝いをしたいと思ったら、地域ボランティアさんに直接聞いてみたり、各市町村の役場で情報収集したり、ネットで検索してみるのも良い方法です。中には大きな団体ではなく、個人で『TNR』活動をされている方もいらっしゃいます。
【参考】さくらねこTNRとは
3.寄付をする
野良猫のために何かしたいけれども、ボランティアをする時間がないなという時は、寄付をすることで不幸な猫を減らすことができます。
『公益財団法人どうぶつ基金』では、2,000円からの寄付を受け付けており、2,000円でオス猫1匹の去勢手術、4,000円でメス猫1匹の避妊手術、10,000円で猫10匹分のワクチン接種が可能となります。何かを少し節約して、猫のために寄付をしてみるのはいかがでしょう?
まとめ
ちょうど10年前の2006年度は、猫の殺処分数約23万頭だったのが、2016年度には約8万頭まで減少になりました。とは言え、まだまだ殺処分ゼロまでには程遠い数字です。そのため、地域でメスの野良猫を捕まえて避妊手術をし、また元の場所に戻すという活動が行われています。
野良猫の寿命はだいたい4~5年。耳をカットされた『さくら猫』を見かけたら、一代限りの命を優しく見守ってあげてください。
そして、『TNR』の活動に自分もお手伝いをしたいと思った方は、ネットで地域情報を検索してみてください。近い将来、不幸な猫がゼロになることを心から願うばかりです。